Ge検出器とNaI検出器の違い ぱーと①

今回のテーマは、

「Ge検出器とNaI検出器の違い ぱーと①」 になります。

ま、簡単に測定器の違いなんかを説明していきたいと思うので、興味があれば読んでくださいませ。

 

国だと、お題目みたいに「ゲルマ!ゲルマ!」と言ってますが、「NaI」と何処が違うんでしょうね。

 

 

それを知る為にも、まずは皆さんに「分解能(ぶんかいのう)」という言葉を知ってもらおうかと思います。中には聞いたことがある人も居るんじゃないでしょうか?

 

まずはいつも通り、字面を見ていきましょう♪

 

「分解能」

 

何かを分解する能力っぽいですね。

ドライバー片手に精密機械をバリバリと分解していく能力・・・?

 

自分で言っておいてなんですが、圧倒的に無理がありますね(汗)

 

放射能測定の場合は、これは分解する能力では無くて、分別する能力と考えてくれ

ればOKです。具体的に言うと、似通ったエネルギーを持った放射線を、きちんと分別する力が「分解能」と呼ばれています。

 

核種特定能力と、言い換えても問題ないで~す。

 

 

ゲルマニウム半導体検出器は、この力が非常に高くなっています。

では、高いとどんな良いことがあるんでしょ?

 

それは、より正確な検査が可能となるんです。

 

放射線は、言い換えればエネルギーです。

このエネルギー。放射性核種毎に放つ値が異なっています。

 

γ線放射能測定は、そんな放射性核種の持つ固有のエネルギーを捉える事で、放射性核種の特定を行っているんですね。

 

 

固有のエネルギーといいましたが、中には当然似通ったエネルギーを持った核種も結構存在しています。

 

例えば、ヨウ素131については、自然界に存在している鉛214がそれに当たります。

他にも、セシウム134については、ビスマス(Bi)214が該当します。

 

尚、「自然界」って恰好つけて言ってますけど。

まぁそこらへんにあるよって意味で捉えてください。

 

 

話を戻して、そんな風に似通ったエネルギーを放つ核種が検体に共存していると、「分解能」が低い測定機だと、そのエネルギーを分ける事が出来ずに、誤認識しちゃうんですよ。

 

 

これはえらいこっちゃですね。

 

「ヨウ素131!ヨウ素131のおな~り~!」

 

と意気込んで叫んだら、実は鉛214でした・・・

 

 

「ひぃいぃぃ!セシウム134じゃあぁ!!」

 

と腰を抜かしたら、実はビスマス214でした・・・

 

 

鉛214も、ビスマス214も土壌中に含まれているので、結構ザラにある話です。

 

 

しかし、ゲルマニウム半導体検出器は分解能が高いので、そのように誤検出する可能性が少ない。これは測定員としては、かなり楽です。

 

反対に、分解能が低い測定器の場合、測定員がその事を的確に見抜かなきゃいけないので、手間が掛かるといえば掛かります。

 

 

NaIシンチレーション検出器の場合なんかはそうですね。

Ge半導体検出器に比べ、大体100倍近く分解能が悪いと言われています。

 

ですから、一回の測定で最終報告を行うのはとても怖いので、うちでは複数回測定を行ったうえで、報告書を作成しています。

 

他にも、「Bis214うんたかんたら」というシールをグラフに張り付けて報告を行っています。シールが張られたグラフを見たことがある人も、結構いるんじゃないですか?

 

 

また、この分解能の高さを活かして「効率曲線(こうりつきょくせん)」を求めることが出来るのも、Ge半導体検出器の大きな特徴です。

 

「効率曲線」があると、どんな点が良いのか?

 

 

簡単に言えば、あらかじめ様々な放射能が詰まった体積線源(たいせきせんげん)を用いて、ピーク計数効率(これが曲線を描くので、効率曲線と呼ばれます)を求めておくことで、放射能計算を行うことが可能となるのです。

 

 

ゲルマニウム半導体検出器の場合、9核種混合線源というものが使われています。

ちなみに、その9つの核種なんですが、

 

 

カドミウム90

コバルト57

コバルト60

セリウム139

クロム51

ストロンチウム85

セシウム137

マンガン54

イットリウム88

 

 

となっています。いや~多いですね~

しかも結構知らない元素が多くて、セシウム137さんが、ポツンとしちゃってます。

 

 

この様に、沢山の核種が詰まった体積線源から効率曲線を求める事で、放射能計算を容易にしてくれるのです。

 

ちなみにCs-134さんが、混合線源にはいません。

 

 

 

ただ、困ったことに、測定容器毎にそのデータが必要なので・・・

沢山の混合線源が必要となるのがネックと言えばネックですね。

 

 

これに対して、NaIシンチレーション検出器は分解能が低いので、予め効率曲線を求める事が出来ません。

 

というわけで、各容器毎に各核種がいるんですね。

測定毎に線源でピーク校正し、エネルギー校正データとスペクトルから放射能を求める事が必要です。

 

しかも、分解能が低いので、誤検出の可能性も・・・

 

 

いや、悪い子じゃないんですよNaIは!

私なんか長い付き合いですから、もうNaIが愛しくて仕方がない人間です。

 

丹念に、丹念に温度管理を行い、日々バックグラウンドを取り、誤検出にも気を配り・・・

まぁ出来が悪い子ほど可愛らしいというヤツですな!

 

 

そんなこんなで、今回は「Ge検出器とNaI検出器の違いぱーと①」と銘打ちましたが、Ge半導体の出来のよさばかりが、目立ってしまいましたね。

 

「次回のぱーと2」では、NaIちゃんの良さも言及していけたらいいかなと親心ながらに考えております。

 

それでは、また次回☆

 


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